菓子刻(かしどき)は、兵庫県姫路市の、姫路駅西エリアと呼ばれるにオープンした焼菓子店である。
この姫路駅西エリアは、昔ながらの建物や土地が残り、間口が小さく2階建ての長屋が見通しの良い真っ直ぐな道に面して続き、手頃なスケール感とともにノスタルジックなとても良い空気感が漂う。
かつて卸売市場として200以上の店舗が建ち並ぶ商業交流の活発なエリアであったが、現在は空き店舗や駐車場が増加していることに伴い行政がリノベーションまちづくりと銘打ちエリア価値の向上を目指し取り組んでいるエリアである。
オーナーはこれまでに既に姫路近郊等でポップアップの出店を行い、オーナーが作る焼菓子とその人柄を求める多くのお客様を獲得していた。
その活発なコミュニケーション、人の往来を是非このエリアに、ということで出店応募が多い中選抜を経て初実店舗の出店を実現させた。
歴史のある商業交流の活発なエリアであったことで当時の人々の流れがあったストーリーも大切にしたい、また自身の店舗の2階を利用することによってギャラリーやイートイン、間貸しの協力他店舗を誘致するなどで更なるコミュニケーションを促したいというオーナーの想いから、様々な人が行き交う「ゲート」のようなイメージを想起しデザインを立ち上げていった。
ファサードは、焼菓子販売の衛生上オープンエアーは避け大型のFIXで道に対して視覚的に開き、立ち寄り易さを演出し、その見通しの良いFIX越しの内部には壁面をはみ出す大きな「枠」を設け、ゲートのイメージを表現した。
この「枠」は、厨房を仕切る建具の枠であり、一輪挿しであり、床の段差の踏み板であり、2階にアクセスする通路への開口部でもある。
空間を構成する要素の機能を複合的につかさどるようなものとしてスケールオーバーの枠を意図的に設えシンボリックな店舗の顔としている。
また、ディティールにはかつて生花店であった物件に対しその趣きも引き継ぎたいということから、さりげない花を挿せることができつつ販促品等のディスプレイもできる可変的な機構を具えた。これが焼菓子のディスプレイに少しの華を添える。
通路のディスプレイには新しい壁を切り欠き木造躯体を現して元々の建物の歴史を感じさせつつ、それをそのままディスプレイ棚とした。
まだまだこのエリアには空き店舗が並ぶ。
オーナーのコミュニケーションに対する強い想いと、行政が行う取り組みがマッチングし、またこのデザインが店舗ブランド・エリアブランドに寄与することで「菓子刻」がより発信力と求心力を持ち、ここを中心にリノベーションまちづくりの活動が活発になる一助になれば光栄なことだと思う。
何より、自身の出自でもある姫路市のこのエリアに人の流れが当時のように戻り、菓子刻が作る焼菓子で、人々の笑顔を作っていって欲しい。
Client: Kashidoki
Project: 菓子刻
Usage: Bake shop
Location: Himeji-city, Hyogo
Total floor area: 50m²
Date of completion: Oct. / 2024
Architects: KYOSEIMIKI DESIGN